第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
病院へ戻った時には、すでに夕方になっていた。埃に塗れた白衣を脱ぎ、シャワーで汗と疲れを洗い流す。熱いコーヒーを相棒に報告書をまとめるこの時間は、意外と嫌いじゃない。よく頑張ったと労って、ようやく自分に戻れる気がするから。
他のスタッフを見送って、すべての業務が終わった頃には20時を回っていた。
「……お腹すいたぁ」
残りわずかなコーヒーはすっかり冷めていて、思い切って一気に飲み干す。明日は特別に休みの許可も出ている。久しぶりに目覚ましを気にしなくていい朝を思い浮かべると、ほんの少しだけ心が軽くなった。
「今日は何か美味しいものでも食べよう」
そんな独り言さえ弾んでいる。頭に幸せな時間を描きながら病院の裏口へと向かった。
昼間は汗ばむ陽気だったのに夜の空気はひんやりとしている。裏口の扉を押し開けた瞬間、視界の端で異質な存在が目に入る。面会時間も終わっているこの時間に車を停めているのは夜間外来に来ている人か、無断駐車のどちらかだ。艶のある黒いスポーツカー、そのやけに主張の強い車は後者かもしれない、なるべく見ないようにとそそくさと去ろうとした、その時だった。
「遅ぇ」
ドアの開く音の後、低くて、聞き覚えのある声がした。振り向くとTシャツ姿のラフな格好のダイナマイトが腕を組んでこちらを見ていた。
「オイ…」
「はい!」
「さっさと乗れ」
反射的に返事をしてしまった自分に、少し遅れて驚いた。助手席に乗れと言わんばかりにドアが開く。
「一つ伺いますけど、私で、間違いはないですよね?」
「バカかてめぇは」
「いえ、すみません…。……失礼します」
助手席は思ったよりもシートが低くて広かった。革の匂いに混じって、かすかに火薬のような残り香が鼻を掠める。ハンドルを握るダイナマイトの横顔をちらりと見る。
「奢らせろって言葉、冗談だと思っていて…。今日だったんですね」
「ああ?」
威圧的な反応に思わず息を呑んだ。