第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
あの日は大型連休の中日で、空は雲ひとつない快晴だった。街は行楽客でざわめき、カフェや駅前の広場からは楽しげな笑い声や子どもの声が聞こえてくる。連休にしては穏やかな始まりでスタッフルームでコーヒーを啜りながら、テレビの画面に映る行楽地の賑わいをぼんやり眺めていた。
そのとき、突然鳴り響いたけたたましい緊急コール。室内の空気が一瞬で凍りつく。
〝救命要請!A市Bトンネル付近で多重事故及び崩落事故発生!直ちに現場に急行してください〟
多重事故に崩落事故。ショックすら覚える情報に胸の奥がざわつく。その場にいたスタッフは一斉に立ち上がり、非常通路を目指す。
私はヒーローではない、治療ができるわけでもない、できることはその状態を維持させてただ〝繋ぐ〟だけ。だからこそ一分でも一秒でも早く負傷者の元へ辿り着くことが私の責務だ。緊急用のカバンを背負い、みんなの後を追う。
どうか無事でいて…、その想いが私を走らせた。
現場に到着すると、目の前には崩れたトンネルの壁と、混乱する車両の山。駆けつけたヒーローの数に現場の深刻さが伝わってくる。けたたましいサイレンと人々の叫び声が入り交じる中、声が鋭く響いた。
「こっちに要救助者がいる!急げ!」
小さな女の子を抱えていたのはダイナマイトだった。指示を受け、私は息を整えながら負傷者のもとへ走る。一番酷い腕の傷からは大量に出血していたのか上着は真っ赤に染まっている。流血する腕を支え、意識がもうろうとしているその呼吸を確認し、できる限り声をかけた。
「もう大丈夫だよ。もうすぐ安全な場所に運ぶからね」
痛みに表情を歪ませながらも私を見つめる目にはしっかりと力もあった。きっと大丈夫…そう自分に言い聞かせるように呟きながら、何度も手を握り返される小さな手に、必死で力を込めた。