第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 凪side
桜の季節が終わって、暖かな日差しと頬を優しく撫でる風が病室の空気まで変えていく。
今日は一人の少年の退院を見届けた。一ヶ月前に起きた事故で繋げることができた命だ。真っ新なシーツを張りながら私は願う。
ここでまた誰かが助かる、きっと誰かを救うための場所になると…。
リネン庫にシーツをしまい、病院の廊下を歩く私の足は自然と静かになる。救命チームとして走り回っていた頃の私は、もう遠い夢みたいだ。今の私は誰かを救うこともできないし、患者さんのそばに立って静かに業務をこなすだけ。
院内の共有ルームからは歓声が聞こえ、視線を上げた。大きなテレビモニターには勝己の姿が映っている。敵のアジト潜入に成功し、怪我人も出さずに〝完全勝利〟を決めている姿。患者からは拍手が起こり、ダイナマイトのコールも聞こえた。
性格の荒々しさ故に誤解されることも多かったけど、最近はチャートも上がってきている。私はそれがとても誇らしかった。
「……あんなに、輝いてるのに、私は…」
でもそんな勝己を見ると同時に胸がキュッと痛む。勝己は地方の任務に追われていて、私と一緒にいられる時間なんてほとんどない。
個性が不安定になっていること、救命チームを降ろされたこと、それを言えないままの現実に罪悪感すらあった。
「考えたって仕方ないのに…」
独り言は静かに落ちる。頭では分かっていてもため息すら重い。
時間通りに業務を終え、胸に残る感情を持て余しながら病院を後にした。目に映る大型連休の直前で賑わう街の様子に、勝己と出会った日の二年前の記憶が蘇る。