第3章 轟焦凍のHERO童貞理論
キスを合図に、昨日覚えた指先の感覚をなぞるように辿る。凪はそれを拒まず、息遣いだけが静かに甘さを帯びていく。身を委ねられている、その事実が胸の奥を熱くさせた。
「まだ痛いか?」
「平気。中でも動いても大丈夫」
昨日よりも解れているそこは人差し指と中指を
「最後までできちゃうんじゃない、かな」
「けど…」
「そのつもりで買ったでしょ?私は大丈夫。焦凍が決めていいよ」
凪の覚悟と選択できない逃げ道を与えられた。その優しい煽りに自分の感情の原点に辿り着く。
「してぇ…に決まってんだろ」
切ないくらいの本音だった。机の上に置いたままの避妊具に手を伸ばす。あの時の自分でさえたった数時間後に使うようになるとは思わなかっただろう。募らせてきた感情が込み上げながらも、冷静さを保つ。
束の間の余白の後、気付かれないように息を整えながら脚の間に入り、膝を立てる。想像でしか知らなかったその瞬間が今現実になっている。
「焦凍、…きて?」
潤んだ瞳と濡れた唇に誘われるがまま凪の腰を抱き、中心にあてがう。静かに水音の後、ゆっくりと腰を押し進める。
「…っ」
「…んっ…、あぁぁ」
いくら解していたとはいえ、当たり前に中は狭い。凪のか細い震える声にはっと我に返った。
「…痛いよな、ごめんな」
そう口にするだけでも辛かった。嬉しいという気持ちよりも罪悪感がまだ強い。心がざわめく中、汗が静かに流れ落ちる。
「そんな顔しないでよ。私、ちゃんと嬉しいから」
「俺…、今、どんな顔してんだろうな。変わってやれねぇのが辛い」
「泣きそうな顔してる。でも、優しい焦凍の顔。私の大好きな焦凍だよ」
深く沈んだまますぐには動けなかった。 臆病な自分が凪の熱で溶かされて少しずつ許されていく。喉がぎゅっと締めつけらて内側から熱い感情が込み上げて、視界が滲んだことに気づいた時にはもう遅かった。涙が頬を伝って静かに落ちていく。
「泣かないでよ」
そう言った凪も目尻からも涙が伝っていた。指で掬い、頬に口付ける。唇から伝わる熱は、凪が愛おしいという感情が色濃くさせた。
「好きだ……。どうしようもないくらい」
「私も」
それ以上の言葉は、今はいらない。ただ、カーテンの隙間から差し込む光が二人の影を重ねていた。