第3章 轟焦凍のHERO童貞理論
いつもの無邪気さの残る笑顔がやけに可愛くて和らぐ。こんな展開に振り回されるのも悪くない、それは凪相手だからだと確信している。
着替え終わると2人で部屋を出る。外はすっかり静まり返っていて、夜風がひんやりと頬に触れた。コンビニまでの道は街灯がまばらに並ぶだけで、どちらからともなく歩幅が自然と揃う。
「今、夜中の1時だって。夜中に会うのも初詣以来だし、こういうのしたことなかったよね?」
「そうだな。あの時は騒がしかったし、今みたいにゆっくりもできなかったしな」
「そうそう。焦凍はA組の新年会あったもんね。今でも会ってるの?」
「凪の家に行くまで会ってた」
「そうだったんだ。仲良しだね」
「ああ、色々助けられてる」
「いい仲間だねぇ」
「そうだな」
凪とまた穏やかな時間を過ごせるのはあいつらのおかげだった。優しさも覚悟も全部、あいつらの言葉に背中を押してもらわなかったら凪とどうなっていたかも分からない。自分が恵まれていることに胸の奥がじんわりと熱くなっているのを静かに感じていた。
深夜のコンビニは俺たち以外の客の姿はなく、明るすぎる照明と、軽やかなBGMだけが二人を迎えた。レジの奥で鳴る電子音だけが静かに響き、適当に手前の棚から奥へと進む。
「泊まるなら焦凍のTシャツとかそういうのも買っとこうか?洗濯は乾燥機使えば朝までには乾かせるけど」
「そうだな…、何も用意しないまま来たからな」
「色は黒でサイズは……、あ…」
「どうした?」
「これからはこれも要るよね?」
凪は迷わず手に取ったのは避妊具の箱。想定外のチョイスにすっかり落ち着いていた熱が一瞬の高鳴った鼓動と一緒に湧き上がって言葉に詰まる。言葉よりも先に否定する感情は昨日までの自分とは違うことの証明でもあった。
「……要るかもな」
「じゃあ、買うよ?いつそのチャンスが来るか分からないもんね。てかさ、焦凍の吃驚した顔、可愛いね」
「可愛いは凪の方だろ」
「そんなことない、照れてるのも可愛い」
「ご機嫌だな」
「そうかな?でも焦凍と深夜徘徊できるのは嬉しいもん」