第1章 爆豪勝己はXXX(初)で優しさを覚えた
確かまだ寮にも入ってない頃でお互いの家を行き来するような関係で、まだ勝己の家に行くのも数える程度だった。
課題を一緒にしようとかそんな理由でもなければ2人きりでなんて会えなくて、たっぷりと残してあった夏の課題、それがこんなにも嬉しいなんて思わなかった。
とは思っていたけど相手は勝己だ。手伝ってくれるわけはない。〝こんなのも分かんねぇのか〟〝バカかテメェは〟と散々罵倒されながら進めていかなければいけない課題は苦痛そのものだ。一夏の甘い経験なんて程遠く、せっかく2人きりなのに甘い空気なんて存在せず、勝己はさっさと終わらせて1人涼しい顔をして分厚い漫画雑誌を読んでいた。
「あー……。やっと終わったぁ」
課題のワークをパンっと閉じた。普段使わない頭を使ったせいか肩が重くて思考も回らない。
とにかく数時間経って全ての課題から解放された。答えが合ってるのかは知らない。でも空欄は全て埋めたしやることはやった。達成感と疲労感に〝んー〟っと背筋を伸ばす。勝己の部屋の窓から見える景色はすっかり夜の色に沈んでいる。
「何時間かかってんだ、遅過ぎだろ」
「勝己とは頭の作り方が違うの」
「バカかよ」
「バカだよ、勝己よりはね…。それより今何時だろ。もう、外は暗いね」
夏にこんなに真っ暗じゃ20時は過ぎていると思う。私は地方から出てきて1人暮らしだし門限なんてものもないから、そんなに慌てる必要もないけどさすがに長時間お邪魔してるのも申し訳ない。
「課題も終わったし、私、そろそろ帰るね」
「なんでだよ」
「だってもう夜遅いし」
「まだいいだろ?」
「でも、ご両親帰ってくるでしょ?ってか、今日勝己の家族に会ってないね。誰もいないの?」
「あー…、今日は帰ってこねぇ」
「へぇ…」
「ああ」
「そうなんだ………」
勝己は漫画に視線を向けたままでその後の返事は返ってこなかった。しばし沈黙が続き、冷房の音が静かに流れる。
「そっか…」
この無言の空気に耐えきれず、自分に対しての言葉が続く。
なんなんだろう、この微妙な空気。勝己はなんで喋らないんだろうか…。そもそも私、ここにいていいのか帰っていいのか分からないんだけど。