第3章 轟焦凍のHERO童貞理論
「言っとくけどね、初めてが怖いとかよりも、裸とか見られた時に焦凍に引かれたらどうしよう、とか女の子の方がそういう不安が大きんだよ?」
「俺は、その不安すらどう触れていいか分からなかった。もし俺が、裸とか…、見たとしても引くとか嫌いになるとかそれは絶対にあり得ない」
「うん。焦凍はそんな人じゃないなって知ってる…。でもさ、あまりにも何もされないのだって不安なんだよ?怖いし不安だし、でも触れて欲しい。矛盾する気持ちがいつも心の中にあってなんか苦しかった」
「俺がもっと早く気付くべきだったな」
「それをね、遠回りって言うんだよ」
くしゃっとした笑顔は言葉より柔らかかった。凪は俺の隣に座って体を預ける。
「ずっと一緒で近くにいたのに壁があったよね、私たち」
「そうだな」
「仲直りしよ?」
「俺の不甲斐なさで泣かせてごめん」
「私こそ、泣いちゃってごめんね」
肩が触れ、腕が重なる。凪の指が触れ迷わずに指を絡めた。視線が重なって距離が近づいた時、廊下に残っていたあの湯上がりの匂いがふわりと鼻をくすぐる。
「……もう少しここにいてもいいか?」
「いいよ。私も明日は朝はゆっくりできるから。でも家帰らなくてもいいの?ご両親も心配してるんじゃない?」
「連絡はしておく。後はなんとかなる」
「本当に?エンデ…お父さんが玄関とかで帰ってくるの待ってたりしないの?」
「勝手に待たせとけばいい」
「帰るのが遅くなって焦凍ぉぉぉって叫んだりしないかな?」
「叫ばせとけばいい。いや…、もうあいつの話は…」
「ごめんごめん、ちょっとからかっただけ」
「今は凪のことだけ考えていいか?」
「ねぇ、焦凍、それは反則。こうやって一緒にいるだけでキドキしてるんだから」
「大丈夫だ…。俺は急がない」
「あ、また逃げてる」
「逃げてる?」
「そうだよ。それ、焦凍の悪い癖。今日はチャンスなんだよ?」
じっと見つめる真っ直ぐな視線にはさっきまでの弱さ優しさも遠慮もなかった。
「キス…」
〝して〟の言葉を唇で受け止める。柔らかくて甘い、軽く重ねた唇は徐々に深くなる。呼吸の合間のわずかな距離でさえももどかしくて自分の感情が理性から本能へと移っていくのを静かに感じていた。