第3章 轟焦凍のHERO童貞理論
「このままベッドに連れていってもいいか?」
逃げる理由も言い訳もこの距離では全部嘘になる。凪の優しさをこれ以上踏み躙らないためにも、自分が覚悟する番だ。一度小さく息を吐いてから、密着した体を一度離して体勢を変えて抱き起こす。
「……抱っこで?」
「嫌か?」
「嫌じゃないけど、でも重くない?」
凪が気にするようなことはなかった。むしろ思ったよりもずっと軽くて、胸の奥をざわつかせた。一瞬だけ視線が合わせた後、顔を隠す仕草すら可愛く映る。
「俺がこうしたいだけだ」
抱き締めた腕の中にある独占欲と愛情が混ざり合ったような強くてしなやかな想い、凪の息遣いに理性が揺れて静かで強い欲が徐々に露わになる。ベッドに凪の身体を慎重に下ろして、迷いなくその上に腕をついた。凪の戸惑うような瞳に映された自分の姿を捉えた瞬間、自分がずっと抑えていたものの正体をはっきりと感じ取った。
「…どうしよう、今、すごく嬉しいかも」
ふわりと笑う表情にぎゅっと胸が掴まれた。自分に向けられた優しさも無邪気さも壊したくない、その思いが最後まで理性となって立ちはだかる。
「だから焦凍、迷わないでね」
凪の覚悟の方が自分よりもずっと上で、不安も期待も全部含んだまま真っ直ぐに見つめる。行ったり来たりな反復する感情の中、ここでなにを答えるべきなのか、なにが正解なのかが分からない、それでも…。
「見ても…、いいか?」
弱さの中に在ったものは品のかけらもなく気の利いた言葉でもない、情けない男の性だった。
「いいよ。…あんまり可愛いのじゃないけど」
躊躇いと緊張に指先が震えた。柔らかな生地のルームウェアのボタンを外し、素肌が広がる。服の上かでは分からなかった薄い水色の生地に包まれる膨らみ、きゅっと締まったウエストからなだらかに続くラインに鼓動が速くなり目が釘付けだった。
「焦凍、顔が赤くなってる」
「悪い。慣れてねぇから」
「慣れてても困るよ」
「そうだな。……すげぇ可愛いって、今、思ってる」