第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「よう」
変わらない声だった。低くて、少しぶっきらぼうで、それなのに、どこか懐かしい。
「……勝己」
名前を呼ぶだけで、胸の奥がわずかに揺れる。
「5年ぶりだな」
「そうだね」
勝己が目の前にいることが、まだ現実じゃないみたいで、不思議な感覚だった。心のどこかではもう会えないかもしれない、そう思っていた自分もいたから。
「おかえり」
何もかも変わってしまったけど、それでも、一瞬だけあの頃と同じ空気に触れた気がした。
「ねぇ、ママ…?」
スカートの裾を引かれた。小さな指先の感触にはっとして視線を落とすと、娘は不思議そうに見上げていた。
「娘、デカくなったな」
そう言いながら、勝己もしゃがみこみ、目線の高さを合わせると、じっと娘の顔を見つめた。
「だいなま!」
「大・爆・殺・神ダイナマイトだ」
「だい、ばく…?……パパ、なんて?」
「まだ難しいな。だいなまでいい」
「おい。ちゃんと覚えさせろや。No.1ヒーローの娘だろうが」
娘に対する視線は優しいのに、口ぶりだけは相変わらずだった。
「娘のこと、知ってたの?」
「ああ?知ってるも何もてめぇの旦那がことあるごとに写真送ってくんだよ。あれ、マジでどうにかしろ」
「え?……そんなことしてたの?」
「そうそう。僕にもよく送ってくれるよ。というかA組のグループには娘ちゃんの写真がよくあがってる」
緑谷君は苦笑しながらそう教えてくれた。そんなこと、私は今初めて知る事実だ。
「それ、いつから?」
「娘ちゃんが生まれてからかな?」
「そんなに前から?」
「可愛いもんは共有すべきだろ?」
さらりと言い切る焦凍に思わず、言葉が詰まる。
「俺の立場も考えろや…っつってもこいつには無理だよな」
「ごめん、全然知らなくて」
「いや、凪が元気でやってんのも知れたし、こいつの悪気のねぇ悪意にも慣れとる」
勝己は視線を少しだけ外しながら、ぶっきらぼうに続けた。