第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
緑谷君の登場もあってか、ロビーからは人がはける気配もなかった。〝また今度ね〟そう言い聞かせても、まだ4歳の娘には理解は難しい。焦凍がアイスを買ってきても、ぐずる娘はなかなかに手強い。
「ダイナマイトはずっと日本にいるみたいだから、また会えるよ」
「あいたかった」
「帰ったらパパと一緒にテレビで見よう」
「いや!」
目に涙を浮かべて必死でこらえる姿には心が痛む。それでも会えないものは会えないのだから仕方がない。
「今夜はイヤイヤ全開かもね」
「そうだな。プリンセス映画だけじゃ機嫌取れそうもないな」
焦凍の言葉に思わず小さく笑ってしまった。この前、機嫌を損ねたときは、プリンセス映画二本だて、そのあとは娘によるプリンセスメイクに付き合わされていた。
「今日もメイクさせられるかも」
「映画はいい。けど化粧だけは勘弁してほしい」
そんな話をしながら駐車場までの道のりをゆっくりと歩く。さっきまでの騒がしさも落ち着き、足音だけ静かに響いた。
「あ…、だいなまとでく!」
そう声をあげたのは娘だった。思わず足を止めて、娘の視線の先を追う。駐車場の裏口へと続く通路に見覚えのある二つの影があった。
「……え」
思わず息が漏れる。私たちを待っていたのは、緑谷君と、勝己だった。
「パパ、下ろして」
言い終わるより先に娘は身を乗り出すようにして腕から抜け出した。
「おい、危ねぇ」
焦凍が制止する間もなく娘は迷わず二人の元へ駆けていく。小さな背中を追うように焦凍も続く。
「だいなま!でく!」
その声に気づいた緑谷君がすぐに駆け寄る。娘と視線を合わせるようにしゃがみ込み、ふっと笑いかける。
「そうだよ。ダイナマイトが娘ちゃんに会いにきてくれたよ」
その言葉に、娘の顔がぱっと明るくなる。
けど、私は緑谷君のもう一人から目を離せなかった。