第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
そのとき、ロビーからは歓声が上がった。その場に響きわたるようなダイナマイトコールが聞こえ、〝うるせェェェェ!!!!〟と聞き慣れた怒号が飛ぶ。
「すげぇ人気だな」
「そりゃアメリカでは、かっちゃんはNo.1ヒーローだからね。日本じゃ炎上しやすいあの性格も、実力主義のアメリカなら、むしろウケてるんだろうね」
「アメリカでNo.1か…」
「轟君だって、変動はあるけど、No.1ヒーローなんだからね?」
「けど、爆豪が帰ってきたんじゃ、それも危うくなるな」
「それだけかっちゃんがすごいってことだよね」
「ねぇ、パパ。だいなま、どこ?」
「あっちだ。今は人が多すぎて見えねぇけどな」
「娘ちゃん、近くに行く?」
「ううん。大丈夫。あとでテレビでも映るだろうし、なんたってあの怒号聞けたから、帰ってきたんだなって思った」
そう言うと、娘は腕の中のぬいぐるみをぎゅっと抱き寄せ、少しだけ口を尖らせる。
「えー?だいなまは?」
「今は忙しいみてぇだ。また今度な?」
「やだぁ。だいなま見る」
「この後、アイス食いに行くんだろ?」
「やだぁ、だいなまとアイスたべる」
「そんな話はしてねぇぞ」
「やだぁぁぁ」
焦凍の淡々とした返しに、娘はついに堪えきれなくなったのか、声を張り上げた。焦凍の腕の中でばたばたと足を動かし、全身で不満を訴える。
「緑谷君、ごめんね。最近ね、赤ちゃん返りなのか、わがままになっちゃって」
「ううん。僕だって娘ちゃんの気持ちは分かるよ。……僕、ちょっと行ってくるね。出迎えもねぇンかよって、かっちゃん拗ねそうだから」
緑谷君は娘に目線を合わせて、にっこりと微笑む。
「娘ちゃん、少し、待っててね」
そう言って背を向け、人混みに紛れていく。緑谷君の登場で報道陣のフラッシュや、ファンのざわめきが一段と大きくなって、ロビーは一段と騒がしくなった。
「……でくもいっちゃった」
「大丈夫だよ。また来てくれるから」
「アイス、行くか?」
「………うん」
今にも泣きそうな顔のまま、小さく頷く。私と焦凍は目を見合わせて、ほっと胸を撫で下ろす。
「いい子だな」
焦凍があやすように娘の頭を撫でる。それでも視線だけは、まだ人混みを見つめていた。