第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
まだ家にいるだろうと、足を止めることなく、マンションへと向かう。見慣れたエントランスには人影を見つけて、その後ろ姿は紛れもない凪だった。
「凪!」
静かなエントランスに声が響く。呼ばれて振り向いた凪は、驚いたように目を見開いていた。
「焦凍?…仕事は?」
俺が来るとは思ってなかったのか、口をぽかんと開けている。よく見れば少し顔色が悪く、覇気もない。それでも俺の仕事のことを気にかける凪に、たまらず腕を伸ばし、抱きしめる。
「朝もずっと一緒だったのに、全然気付いてやれなくて…。ごめん」
いつから体の変化を感じていたのかは分からない。朝も変わらずに朝食や弁当も作ってくれていた。俺はまだ、抱きしめた凪の体に新しい命が宿っているかもしれないという実感はない。
それでも。ただ、まるこがどうしようもなく愛おしいと感じていることだけは、はっきりしていた。
「本当に帰ってきてくれたんだね」
胸元から聞こえる声はどこか安心したような声だった。
「不安だっただろ?」
「……少しね」
「一人で背負わせて、悪かった」
「そんなことない。こうやって来てくれたもん」
腰に回された腕がわずかに力を強める。凪の抱えていた不安も、その重みもようやく現実として伝わってきた。
「でも、電話では緊急要請って聞こえてたけど…」
「ああ。でも麗日たちが代わってくれた」
「…大丈夫だったの?」
「あいつらの方が、今の俺よりずっと頼りになるからな」
判断に迷った一瞬を支えてくれたのはあの三人だ。背中を押してくれたからこそ、今、凪の不安にも寄り添えている。
「病院は今からだろ?」
「うん」
少しだけ腕の力を緩めて、まるこを見下ろす。
「何があっても全部受け止める。凪は心配いらねぇからな」
言葉でしか不安を消せないのは分かっている。それでも、この先を決める瞬間を、ひとりで立たせるつもりはなかった。
一緒に受け止める。それだけは、もう揺らがない。