第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「今度、頼んでおくな」
そのときだった。机に置いてあったスマホが小さく震え、画面が明るく切り替わる。静かな室内に、そのわずかな振動音が響く。
「悪い。今、メッセージが入った」
「もしかして彼女さん?」
「ちょっと見ていいか」
「もちろんですわ」
机の上に置いたままのスマホへ視線を落とす。表示された名前を見た瞬間、ほんの少し、呼吸が緩む。指先で画面に触れ、通知を開く。
〝お仕事中にごめんね。少し時間が取れたら、連絡してもらえないかな?〟
いつもと変わらない落ち着いた文面のはずなのに、どこか引っかかる。何かあったのか、と胸の奥がざわつく。
「何か、あったん?」
俺の戸惑う表情が気になったのか、麗日が心配そうに見つめている。
「連絡してほしいって、それだけで…」
「え、なんかそれ、意味深やない?」
「大丈夫でしょうか?」
「轟ちゃん、すぐに連絡してあげたら?」
「悪い。今、連絡していいか?」
「うん。してあげて!」
「私たちのことはお気になさらず」
そんな言葉に背中を押されるように小さく頷いた。スマホを手に取り、画面に表示された〝凪〟の名前に短く息を吐いてから、通話ボタンに触れる。
呼び出し音が妙に長く感じる。早く出てくれ…、そう思った、そのときだった。
「焦凍…?」
電話越しの凪の声は少し元気がないようにも聞こえた。
「今は時間大丈夫なの?」
「ああ。作ってくれた弁当を食べてた。…どうした?何かあったのか…」
「うん…」
小さく返ってきた声のあと、言葉が途切れる。電話越しに、かすかな息遣いだけが伝わってきた。何かを言おうとして言葉を選んでいるようなそんな間だった。
「どうした?」
「あのね…」
凪の声が、震えているようにも聞こえた。もう一度、息を整えるような間が空いてから、言葉が続く。
「実はね、朝から少し気分が悪くて……。それでね、今、生理も遅れてて……」
その言葉に一瞬、思考が止まった。
「検査薬使ったら、……妊娠、してるみたい」
妊娠。その二文字が意味としては理解しているのに、現実として結びつかない。
「そう、か。…今、体調は?」
ただ、自分でも驚くほど冷静で、落ち着いていた。