第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 夢主side
あれから三ヶ月が経った。あの事件が解決した後、この街はようやく平穏を取り戻していた。朝のニュースから流れる天気予報では、連日桜の開花予想が告げられ、そのたびに淡い期待が胸に広がる。街に出れば、春先の風が頬をかすめ、並木道の桜の蕾はほんのりと色づき始めているのが目に入った。
焦凍と過ごす時間も、気づけば少しずつ増えていた。私の隣には焦凍がいる。それが今では当たり前のように感じていて、居候という曖昧な関係は、いつの間にか同じ空間で同じ温度を分け合う恋人同士の同棲へと変わっていた。
勝己との思い出が詰まった、このアパートとも後数日でお別れだ。今日は最後の荷物を焦凍のマンションへと送る日だ。部屋の中はがらんとしていて、こんなに広かったのかと今になって思う。
荷物をダンボールに詰めながら、机の上に残るチャームを手にとった。指先に触れる壊れた金具、傷のついた透明なレジンの中の色褪せない桃色のかすみ草が閉じ込められている。そっと傷を撫でて小さな白い箱の中へとしまった。
この鍵を開けることは、もうない。それでも手放すこともできなかった。
それでいい。これが私なりのけじめの付け方だから。
そのとき、開けっぱなしの窓から風が吹き込んできた。ひんやりとした空気に、どこかやわらかな暖かさが混じる。頬を撫でていくその風はそっと背中を押してくるみたいで、箱を抱えたまま、静かに目を閉じた。