第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「ンだよ。それ…」
「なんかいいな。二人の秘密ってやつも…」
「テメェはもっと警戒しろや。こんなんじゃ凪のこと任せねぇぞ」
「いや、そこは任せてくれていい」
「だったら出久にも警戒しろ。世の男は全員一人残らず警戒しとけ」
「爆豪は、やっぱりスケールが違うな…」
「だから感心してんじゃねぇ!!」
爆豪の声が響く中で、凪は屈託なく笑っていた。
凪に初めて会った時、あいつは爆豪の隣で、今みたいに笑っていた。その光景が、ふと目の前に重なる。けど、今は俺の隣で微笑んでいる。
どこか現実感が追いつかない。それでも手の中にある温もりはそれを確かだと教えていた。
「かっちゃん、さっきから大きな声出してるけど、まだ無理できないんだからね?」
「うるせェ!誰のせいだと思っとンだ!」
「僕です!僕が悪かったよね!だから、失恋したかっちゃんのことは僕に任せて」
「失恋っつーな。こっちはまだ完全に諦めたわけじゃねぇ!!」
「嘘でしょ?いくら諦めが悪いからってそれはさすがになくない!?」
爆豪の怒鳴り声が病室に響く。びくっと肩を揺らして小さく縮こまる緑谷と、それを気にする様子もなく怒鳴り続ける爆豪。そのやり取りは、雄英にいた頃と何も変わらない。懐かしさに似た感覚が胸に広がる中、少しだけ肩の力が抜ける。そんな空気を察したのか、爆豪はすぐに俺に視線を向ける。
「ンで、轟ィィ!ぼさっとしてねぇでよく聞いとけ。凪を泣かせたら奪い返すっての、死ぬまで忘れんじゃねぇぞ!」
その言葉が、真っ直ぐ胸に突き刺さる。握っている凪の手の温もりを確かめるように、わずかに力を込めた。
「分かってる。爆豪が相手だから、気が抜けねぇな」
「当たり前だ。一分一秒、気を抜くなよ。」
「ああ。…約束する」
「ついでだから、凪にも言っとくわ…」
さっきまでの荒々しさが、ほんの少しだけ緩む。向けられる視線も、俺に向けていた鋭さとは違っていて、爆豪なりの不器用な優しさが滲んでいた。
「出久と何話したンかは知らねぇけど。……この先も、今みたいにちゃんと笑ってろ」
「……うん。…ちゃんと笑ってるから」
「だったら、いい」
短く吐き出すように言って俯く。小さく息を吐いたその仕草がさっきまでよりも静かだった。緑谷がそっと爆豪のそばに寄って話しかける。