第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「…出久?ンでわざわざ電話なんて…」
通話ボタンを押すと、スマホ越しに風を切るような音やざわついた街の雑音が流れ込んでくる。
「急に連絡してごめんね。…少し、いいかな」
出久の声は落ち着いていていつもと変わらない。
「なんかあったか?」
「確認したいことがあったんだけど。…一応、今日まで僕が所長代理でいいんだよね?」
「あ?…ンだよ今更」
「なら、所長代理として言うね」
一度、小さく息を整えた後、わざとらしいほど咳払いが、通話越しに響く。〝ンだよ…〟そう言いかけたとき…。
「大・爆・殺・神ダイナマイトは、明日から三ヶ月間、育児休暇を取得してください。これは所長代理の僕からの命令です」
一瞬、その言葉の意味が理解できなかった。
「は?テメェ、何言っ…」
「先に言っておくけど、これは僕だけが決めたことじゃない」
反射で声が出かけたところで、出久の声がそれを遮る。
「上鳴君や切島君、瀬呂君、飯田君たちもチームアップとして協力したいって…。それにね、エンデヴァー事務所が全面バックアップしてくれる」
「……轟が?」
「そう。…だから凪さんのこと、しっかり支えてあげて」
〝これはかっちゃんにしかできないことだよ〟そう続ける。その言葉がまっすぐ胸に響く。
「けど…」
「もちろん、僕たちがピンチになったときは、迷わずかっちゃんを呼ぶ。……でも、僕たちだってかっちゃんや凪さんの力になりたい。それはこの先もずっとだよ」
出久の言葉に、すぐには返せなかった。通話の向こうから聞こえる雑音に、小さく息を吐く。
「……テメェらはどうしようもねぇ、馬鹿だな」
「それも揃いも揃ってね」
「だったら、倍にして返す。そんときは覚えてろ」
「うん。そのときはよろしく」
静かな沈黙の後、出久は続ける。
「じゃ僕は今からパトロールに行ってくるから。またね」
そう言って、通話はあっさりと切れた。部屋に静けさが戻ったあと、すぐ隣の凪を見る。まだどこか信じられないような表情のまま、こちらに視線を向けていた。