第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
そして翌年の8月。小さな命が誕生した。
出久からは〝100%かっちゃんの遺伝子だね〟と言われるほど、二人とも髪の色や目の色は俺に似ていた。産毛のような髪が、部屋の柔らかな照明を受けて淡く光る。
初めての育児、それも双子。お互いの両親からのフォローはあるものの、凪の体力の回復や傷口の治癒はまだ時間がかかりそうだった。
起こさないようにと寝室のドアをそっと開く。それでも凪はその気配を感じたのか、薄いまぶたをぱちりと開いた。
「悪い。起こした」
「大丈夫。もうそろそろ起きようと思ってたから」
ベッドに腰掛け、ゆっくりと体を起こそうとする背中を支える。まだ傷口は痛むのか、一瞬だけ表情が険しくなる。
「大丈夫か?ちったぁ休めたか?」
「うん。少し眠れたよ。……二人は?」
「まだ寝とる。あいつら、寝顔だけなら見分けつかねぇな」
「そうだね。寝顔まで勝己にそっくりだもんね」
さっきまで見ていた寝顔がふと浮かんだ。最初は抱くことさえ怖かった。それでも今では、腕に収まる小さな温もりがただ愛おしくて、親になったという実感が確かに積み重なっていく。
「退院できたけど、結局、入院も早まっちゃったし、勝己には心配も迷惑かけちゃったね」
「謝んな。双子も元気に生まれて凪も無事なら上出来だ」
言い終えるより先に、抱き寄せた。柔らかな髪の毛、細い肩、凪がここにいてくれるだけで、それでいい。
「勝己は明日から復帰なんだよね?」
「ああ。明日からババアが来る予定になっとるけど、傷もまだ痛ぇだろ?」
「少しね」
「あのババア無駄に元気だからこき使ってくれ」
「でも少しずつ体力も戻さなきゃね」
柔らかく微笑む表情は穏やかなのに、その視線だけはまっすぐに前を見ていた。
「無理すんな」
そう言って額に口づける。凪は受け入れるように静かに体を預けた。
「今はチームアップとして緑谷君が手伝ってくれてるんだよね?」
「俺の不在が長引いたからな。今は所長代理だわ」
「それも明日まで?」
「一応な。あいつはあいつで楽しそうにヒーローやっとるわ」
「またお礼言わなきゃね」
その時、ベッドサイド上に置いていたスマホが小さく震えた。画面に浮かんだ名前は〝出久〟。まるでタイミングを計ったかのような着信に、凪と顔を見合わせた。