第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「でも…、今から?」
「そうだ」
「マスコミ対策で、退院だって配慮しもらったのに、婚姻届なんてもらいに行ったら騒ぎになっちゃうよ?」
「知るか、ンなこと。世間がどう騒ごうが関係ねぇ。こっちは二度と離す気はねぇんだよ」
強く握られた手に、言葉以上の覚悟が伝わってくる。強く言い切ったその瞬間、ぐっと腕を引かれる。
「え…」
気づいた時には、勝己の腕の中に引き寄せられていた。
人通りのある道。行き交う人の気配も、視線もすぐそこにあるのに…。でもそんなことは、お構いなしで、逃がさないみたいに、背中に回された腕に力がこもる。
「ちょっ……勝己、ここ」
思わず顔をあげた次の瞬間、唇が重なった。触れるだけじゃない、確かめるように深く重ねられて息が奪われる。周りのざわめきが、遠のいていく。
「……愛してる」
勝己の唇が紡ぐ言葉と、強引なくらいの優しさが、心を溶かしていく。
「一生かけてその意味を分からせてやる。覚悟しとけ」
甘く刻まれる未来への約束に、私はただ小さく頷くしかなかった。
涙を拭ってくれる指先も、触れる唇も、強引で荒っぽい口調も、その全部が愛おしくてたまらない。
悲しい思い出が残る私のアパートも、新しい記憶と感情で塗り変えられる。あの日に止まってしまった二人の時間も、また動きだす。
机には婚姻届と、金具の直ったチャームが添えられている。小さな未来が、確かにここから始まる、そんな予感で心が満たされていった。