第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「色々、悪かったな…。あとは俺の役目だ」
「ああ。…頼んだぞ」
「……ン」
二人になったエレベーターの中で、勝己は静かに呟く。
「凪は何も間違ってねぇ」
その言葉に切なさがこみ上げてきて、涙が頬を伝っていく。それ以上、勝己は何も言わず、何も聞かなかった。ただ、全てを受け入れ止めてくれるように抱きしめてくれていた。
外へ出ると太陽の光が眩しくて、目を細めた後、少しだけ涙の味がした。勝己の手が迎えにくるように、逃さないみたいにしっかりと繋がれる。明るい時間に手を繋いで歩くなんて初めてだった。歩幅は私に合わせるように、ゆっくりと歩く。
「凪ん家行く前に、寄り道すっぞ」
「どこへ?」
「役所」
「え…?」
「こっから近ぇだろ」
「でも、なんで?」
私の問いに勝己は足を止めた。ほんの一瞬だけ、言葉を選ぶような沈黙。落ち着いているのに、真っ直ぐで熱を持った視線に思わず息が止まる。
「婚姻届、もらってくンだよ」
「……婚姻届?」
「俺と、結婚してほしい。…一生、隣にいろ」
その言葉に、思考が追いつかないまま、ただ繋いだ手の感触だけが強くなる。ぎゅっと握られた温もりは、私の未来まで包み込んでくれるみたいだ。
周りの景色はぼやけて、勝己の紅い瞳に全てが奪われる。視線を逸らすことなんてできなかった。この世界にいるのは、私と勝己だけのように感じていた。
「で…?凪の返事は?」
私でいいのかな…、そんな迷いも一瞬だけ浮かんだ。でも、迷う必要なんてもうない。
「私でよければ、勝己のお嫁さんにしてください」
一瞬の沈黙のあと、繋いだ手がさらに強く握られる。
「……上等だ」
そう笑った勝己の表情は、どこか満たされたように柔らいでいた。こんな顔、私しか知らないんじゃないかと思うくらいだった。
「じゃ、行くぞ」
繋いだままの手を軽く引かれて、一歩踏み出す。さっきまで止まっていた時間が、ゆっくりと動き出したみたいだった。