第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
それから焦凍のマンションに寄った。玄関を開けた瞬間、想定はしていたけど、胸の奥がわずかにざわついた。積まれたダンボールと、その隣に並べられた服や小物。どれもきちんと整えられていて、私がここで過ごしてきた時間を、焦凍が大切に扱ってくれたことが伝わってくる。
勝己は何も言わずに、ポケットに手を入れたまま、じっと見つめている。
「あとは和室に置いてあるものだけだと思う」
「ありがとう。それだけ取ってきていい?」
「ああ」
和室への襖を開けると、焦凍と過ごした時間が蘇る。初めて過ごした夜も、バルコニーでブルースターを一緒に見つめた朝も、あの時間のすべてが静かに溢れてくる。
勝己を選んだことに後悔はない。それでも、この場所に残る時間はやさしいまま胸を締めつけてくる。
「凪…」
名前を呼ぶ焦凍の声に、反応する前にゆっくりと息を吐く。
「凪といた時間は、すげぇ楽しかった」
「……私も、この場所でたくさん笑ったよ」
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
焦凍への想いは確かだった。ありがとうに変えるなら、何度言っても足りないくらいだ。
「爆豪に、幸せにしてもらえ」
「……うん。焦凍もいつか素敵な人と出会って、幸せになって」
「凪以上は、難しいだろうな」
「そんなことない。焦凍なら大丈夫」
焦凍の優しい視線が、何もなかった私を支えて、ひとつひとつに意味を重ねてくれた。ゆっくりと思い出に変わっていくけど、それはこれからもずっと胸に残るから。私は焦凍の幸せを願える人でありたい、そう強く思う。
その時、その場の空気を壊すような勝己の低い声が割って入る。
「おい、俺の存在、フル無視してんじゃねぇぞ」
その声に反応するように振り向くと、勝己は腕を組み私たちを睨むように見つめている。