第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「早く元気になってね」
「言われんでも元気になるわ。爆速で……」
「一緒に帰ろうね」
「当たり前だ…」
それ以上、言葉はいらなかった。
卵焼きとりんごの空になったタッパーはサイドテーブルに置いた。代わりに、凪の体を軽く引き寄せて、そのままベッドに座らせる。遠慮がちに身を引こうとするのを逃がさず、腕に力を込めた。ふいに顔をあげたその瞬間、凪の瞳に俺が映って、たまらず、唇を奪う。
凪の柔らかな唇を味わうように何度も角度を変えて、重ねた。病室には合間の呼吸とリップ音が響く。
「……りんごの味だね」
唇が離れて、俯く凪の頬はほんのり色付いていた。
「ンな可愛いこと言ってっと、食っちまうぞ」
「……ここは病院です」
「わーっとるわ…」
凪の頬がまだ赤く、俯いたまま俺の腕に身を預ける。華奢な体を抱き寄せて、何度もその存在を確かめる。
「けど、面会時間ギリギリまでは離す気はねぇから」
病室の窓から差し込む柔らかな光に、二人の影がそっと重なる。
凪の涙、別れの痛み、轟との時間、そのすべてが遠くに感じる。
隣に凪がいる。それ以上、俺が望むものはなかった。