第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
轟が病室に戻ってからは、また凪との静かな時間が流れる。
「勝己…」
「ンだよ…」
「少し寝る?起きてたの辛かったんじゃない?」
「辛かねぇよ。お前と轟のぼけっとした会話を聞かされる身にもなれや。ツッコんでやっとんだわ、こっちは」
「というより、勝己が一方的に噛み付いてただけじゃない?」
「どっちも一緒だ…」
「元気ならいいんだ」
そう言いながら保冷バックを膝にのせて、俺を見る。
「あのね、油淋鶏ではないけど、勝己の分も作ってきてるんだよ」
保冷バッグの中から取り出されたタッパーに、視線が止まる。
「卵焼きとりんご。ちゃんと消化にいいやつにしたから。看護師さんにも確認してあるの」
「……チッ。最初からそっち出せや」
「だってさっきはまだ焦凍もいたし」
「だからってあいつ優先すんなや」
ぼそっと吐き捨てると、凪は少しだけ困ったように笑う。
「ほら、起きれる?」
「……ン」
差し出された手を、ほんの一瞬だけ見てから掴む。まだ力は戻りきってないはずなのに、それでも離す気にはならなかった。
凪の作った卵焼きは、柔らかくて、甘さと塩気のバランスがちょうどいい。出汁の香りもじわっと広がる。
もう一度、凪の飯が食いたいって思ってた。それが、今こうして叶ってる。
「美味い…」
たった三文字も今なら素直に言える。隣で〝よかった〟と笑う凪を見て、ああ、俺は、こいつのことが、どうしようもなく好きなんだと、思い知る。