第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 勝己side
しばらく二人でテレビの画面を眺めながら過ごす。事件の前はろくに家にも帰れず、凪とどんな風に過ごしていたかも忘れてかけていた。けど、俺もこんな風に何も考えずにただそばにいられる時間が欲しかったのかもしれない。
凪に触れたい。まだ身動きが取れない体でも、凪を前にするとそんな欲もちらつく。
柔らかな髪に触れようと手を伸ばした瞬間、凪は思い出したかのように席を立ち、持ってきた荷物の中身を整え始めた。
「もう、帰るンか?」
「ううん。今から焦凍のところに行こうと思って」
「は?」
「ん?」
凪は悪気なく、キョトンとした顔で俺を見る。
「なんでだよ…」
「この前ね、私の作った油淋鶏が食べたいって言ってたから。焦凍はもう食事の制限もないって看護師さんが…」
「おい」
「ん?」
「テメェの彼氏は誰だよ」
「……勝己、だよ?」
「だよなァ…。何、しれっと他の男ンとこ行こうとしてんだよ。しかも、轟ンとこに…」
「だって約束…」
「だったら、ここに轟を呼ぶ。二人きりにはさせねぇ」
凪も元々天然だったが、轟のせいで悪化してんじゃねぇかよ。ふざけんな。思わず言葉に出してしまいそうになるのを抑えながら、轟にメッセージを送った。メッセージ画面にはすぐに既読がつき、〝分かった〟とだけ返ってきた。
「来るの?焦凍」
「2分以内に来なかったら、開けんでいい」
「またそんなこと言って」
凪は呆れながら、扉を見つめる。
「言っとくが、こっちは1000歩譲ってんだからな。普通だったら会わせねぇ」
「そっか。そうだよね。……でも、会うのを許してくれたのって私のため?」
「許してねぇ。監視だ監視!!」
乱暴に言葉を吐き捨てながらも内心は理解しているつもりだった。凪が後悔しないようにって、全部ちゃんと向き合えるようにって、そう思ったからだ。けど、そんなもの口に出せるわけがない。
2分も経たないうちに轟は呑気にやってきた。当たり前みたいに何の躊躇もなく凪に視線を向ける。それが、無性に癪に触る。