第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「俺ァ、まだ、起き上がれねぇんだよ。…凪が泣いてても、なんもしてやれねぇ」
わずかに眉を寄せ、目を細める。困ったように微笑むような表情が勝己の精一杯の優しさに見えた。胸の奥がぎゅっと締めつけられ、涙がまた溢れる。
「勝己が生きてるなら、私はもう何もいらないんだよ」
勝己の優しさに触れて、またこうやって話ができてる。それだけで私は十分だから。
「……あン時、凪が俺を助けてくれたんだよな。意識が朦朧としてた時も、凪の声は聞こえた」
「…覚えてるの?」
「断片的にな。…凪が泣いてて、誰が泣かせたんだって、そいつ絶対許さねぇって、思ってた」
勝己は天井を見上げ、小さくため息をつく。肩がわずかに震え、声を絞り出すように続けた。
「けど…、凪を泣かせてたのは俺だった。……ずっと、凪一人に背負わせてた。……全部、俺のせいだった」
続く言葉に、どうしようもなく胸が痛んだ。私は勝己に自由になって欲しくて、別れを選んだ。だけど勝己は別れた後も、私の分の痛みすら背負ってくれていたんだって分かる。
「それは違う。私はそんなこと、思ったこともない」
「俺が救われたのはお前のおかげで、お前を救ったのは轟だ。その事実は変わらねぇ…。だから、凪は轟と幸せになれ。……それが一番いい」
その言葉を聞きながら、雲の隙間から漏れる光が病室に柔らかく差し込む。雪はキラキラと光って、ただ静かに時間が流れる。置き去りだった勝己と私の想いは確かにここにあると感じた。
「今日ここに来たのはね、自分の気持ちの答え合わせをするためなの」
泣くのを堪えて、下手くそに笑っていたあの日の私に手を差し伸べる時がきた。
「私ね…、あの時、……待って、って勝己に言いたかった。個性が消えてしまいそうな私を、怖がっていた私を、許して欲しかった」
これが私が勝己に伝えたい言葉だった。この先の選択に、後悔がないように、あの日の私のままで勝己にも向き合う。