第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「今から、会ってくるね」
「うん」
緑谷君の力強い眼差しを背に、廊下を進む。呼吸が少し早くなるのを感じながらも、胸の奥には、焦凍と勝己への入り混じった重さとして残っていた。
病室の扉が見えてくる。〝爆豪勝己様〟と書かれたプレートに、呼吸が一瞬止まった。この扉の向こうにいる勝己の顔を思うだけで、指先が震えている。
会いたかったはずなのに、怖い。そんな感情が、胸の奥で静かに揺れていた。
〝爆豪に、会ってほしい〟
焦凍の言葉が、すぐそばで背中を押す。ぎゅっと締めつけられる胸の痛みを抱えたまま、一歩踏み出して、扉をノックする。
かすれた声が扉の向こうから返ってきて、ゆっくりと扉を開く。わずかに開いた隙間から、消毒液の匂いと静まり返った空気が流れてくる。少しギャッチアップされたベッドに横になったまま、勝己は視線だけをこちらに向けていた。病衣から覗く包帯がまだ痛々しくて、その姿に息が詰まる。
廊下の静けさと、奥の窓に映る雪。世界が一瞬、止まったようだった。
「ンで…、来んだよ…」
かすれた声は低く、いつもより少しだけ力がなかった。でも、その言葉とは裏腹に、一瞬だけ見開かれた目は私を逃さないみたいに視線を重ねる。
「勝、己……」
言葉が喉で引っかかって、うまく声にならなかった。
会いたくて、名前を呼びたくて、触れたくて、何度も飲み込んで押し殺した感情は、涙になって、止められない。
「よかった…。生きてて…くれて…」
頬を伝っていく涙は温かかった。
「泣いてんじゃねぇ…」
ぽつりと呟いた言葉は、驚くほど静かだった。強がるでもなく、怒るでもなく、ただ、私を受け止めるような声。