第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
その時、ふと、母の声が聞こえた気がした。救命チームへの所属が決まったあの日、私に強く言い聞かせるように告げられた言葉。
「いい?どんな状態であっても、あなたが諦めちゃだめなのよ。触れて、探しなさい。あなたが、その小さな〝兆し〟を見つけるの」
一瞬、呼吸が止まる。続けるように、今度は父の声が重なった。
「その小さなエネルギーが、どこへ向かおうとしているのか。それを、繋ぎ止めるように支えなさい」
二人の言葉に背中をそっと押された気がして、震えていた手に温かさが戻っていく。
今なら、まだ間に合うかもしれない。その強い想いが、もう一度、私を前へ向かせる。
私が、繋ぐ。その一心で、私は顔を上げた。
「私の個性を使ってください」
一瞬、息を吸い込んでから、言葉を重ねる。
「私の個性なら、命を繋げるかもしれないから」
人の間をすり抜けるようにして、一歩ずつ前へ進む。途中、緑谷君の不安そうな顔がちらりと視界に入る。〝大丈夫〟言葉は出さずに、ただ小さくうなずく。視界を戻すと、薄いシートに横たわる勝己の姿があった。
血に濡れたヒーロースーツ。包帯が追いつかないほどの出血。さっきまで遠くに感じていた現実が、容赦なく目の前に突きつけられる。
喉の奥が詰まって、声が出ない。それでも、足を止めなかった。
「勝己……」
膝をつくように傍にしゃがみ込み、震える声で名前を呼んだ。返事はなく、そっと手を伸ばした先の勝己の体は想像以上に冷たくて、恐怖と絶望が胸を押し潰す。
「……っ」
それでも、私はこの手を離すわけにはいかなかった。指先を通してわずかに感じる温もりは、まだ諦めていない勝己の想いだ。
「大丈夫……。まだ、間に合う」
自分に言い聞かせるように呟いて、もう片方の手も重ねた。
目を閉じて、指先に意識を集中させる。どこか懐かしくて温かくて、強い感覚がそこにはあった。