第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「かすみ草が好きなのね。色のついたかすみ草は色水を吸わせて染めるの。ムラも出てしまうけど、それはそれで私は好きなの」
「はい。どの色の花もとても可愛いですね。……私、桃色のかすみ草はすごく好きで」
そう言いかけて、少しだけ言葉を飲み込んだ。桃色のかすみ草は私の想いと一緒に閉じ込めたまま、チャームの中で今も可憐なまま。片付けをしていてもあのチャームだけはしまうことも捨てることもできなかった。
「そういえばね、あなたくらいの歳の男の子もいたのよ。もう立派な大人でしょうけど、男の子って呼ぶのも失礼かしらね」
「常連のお客さんですか?」
「ええ。無愛想で、言葉遣いは荒い子だったけどね……お花を選んでる時は、とても優しい目をしてたの。今までも年頃の子はたくさん見てきたけど、あの男の子だけはなぜか忘れられなくてね。花の色で意味が違うことも、熱心に聞いていたわ」
黄色のかすみ草の瓶を手にとって、小さな花びらに触れる。
「最後に来たのは夏だったかしら。大切な人が入院したんだって少し淋しそうにしてたの。だからあの子にも元気になって欲しくて、黄色のかすみ草を選んであげたのよ」
その言葉に、記憶の奥に残っていた黄色のかすみ草の花束が過った。焦凍からは緑谷くんからだと聞かされていたけど、なぜか勝己のことを想っていた自分もいた。確証はないけれど、あの花束を贈ってくれたのは勝己だったんじゃないかって、今になって重なっていく。
「そんなことがあったんですね」
声がかすかに震えていた。泣いてしまいそうになる感情をぐっと堪えて、声を張る。
「でもきっと…、その男の子も元気だと思います」
「そうよね。また、どこかで会えるわよね」
「はい」
そう答えたあと、私は店内をゆっくり見渡す。白や淡いピンク、柔らかな青のかすみ草たちが私を呼んでいるような気がした。
「私も、かすみ草、買って帰ろうかな…。でも、どの子も可愛くて迷いますね」
「迷った時はね、自分の直感でいいの。それを信じなさい」
「私の直感?」
「そう。それが今のあなたの気持ちよ?」
〝私の気持ち〟その言葉に胸が熱くなった。もう一度、色とりどりのかすみ草を見ながら、目に止まった先に手を伸ばした。指先がふわりと花びらに触れた瞬間、柔らかい感触と淡い香りがほんのり広がる、その時だった。
