第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
指で触れる度に、唇で啄む度に、甘い吐息が跳ねる。ひとつも聞き逃さないように、指先に神経を集中させた。
「…焦凍」
凪の唇が僅かに動いた。わずかに上擦った声で、視線を落とすと、潤んだ瞳が俺を捉える。
「……痛かったか?」
「…違うの」
凪の手が頬に触れて包み込む。ゆっくりと目を細めて柔らかく微笑んだ。触れれば壊れてしまいそうなのに、その笑顔だけは不思議とまっすぐで、目を離せなかった。
「そんなに優しくしなくてもいいんだよ?」
「…悪ぃ。……俺、経験ねぇから」
それでも、向き合いたかった。この中に、自分の存在を残したいと、強く思った。
「誰かを好きになったのも、凪が初めてで…。正解が分かんねぇんだ」
凪の息遣いが耳に触れる。次の瞬間、その腕がそっと背中に回った。逃がさないように、確かめるみたいに抱き締められて、触れ合う肌越しに鼓動が重なる。
「ごめんね。可愛いって思っちゃう。泣きそうなくらい、焦凍が愛おしいよ?」
その言葉を聞いた瞬間、息が詰まった。何かを返さなきゃいけないのに、うまく言葉にならない。喉の奥が熱くて、声が出ない。誤魔化すみたいに、抱き締める腕に力を込めた。
「……そういうの、慣れてねぇ」
掠れた声が、自分でも分かるくらい不格好だった。
「けど……、嬉しいんだと思う」
「焦凍…」
「凪に名前を呼ばれるだけで、どうにかなっちまいそうだ…。余裕も何もねぇ」
「それでいいの。全部、ぶつけてくれていい。全部、受け止めるから」
指を絡める熱も、重ねるキスも、荒くなる呼吸も、ただこの空間に溶けていく。
胸を焦がすような強い感情と、凪の存在で埋まっていく感覚に、ただ酔いしれていた。
触れるたびに、足りなかったものが埋まっていく。
少しずつ、確かに満たされていく。
欲しかったのは、きっとこういうものだった。