第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 轟side
凪を腕に抱きながら自分の気持ちを確かめていた。触れれば触れるほどに強くなっていく自分の感情にまだ言葉が追いついていない。
凪が誰を思っていても、俺を求めてくれるのなら、精一杯に応えたかった。
「焦凍…」
「どうした?」
「私って、ずるいね。…こんな時くらい、笑って〝おめでとう〟って言える自分でいたいのに、言えなくてさ…」
腕の中で小さく鼻をすする。小さな手をぎゅっとに握りしめて、また一人で背負い込もうとしている。
「今だってこうやって焦凍に甘えちゃってるの、ほんとずるい…」
「……ずるくねぇだろ」
小さく息を吐きながらその手を包むように握る。
「俺はそうは思わねぇ。凪はずっと爆豪が好きで、大切だったから、……自分から手を離した」
「私が勝己の隣にはいられなかっただけだよ。あの時、手を離さなくても結果は同じだったの」
凪の言葉にあの時の光景が重なった。白くて細い腕に滴る赤い線。胸を抉られるほどの痛みと苦しさが蘇る。それでも自分でも驚くくらい、声は落ち着いていた。
「あの時凪は一人で背負って、傷ついただろ?」
凪の目から涙が溢れた。最初は一粒だけ。けど、それをきっかけにしたみたいに、次々と溢れて止まらなくなる。
「……っ」
声を押し殺すように唇を噛んで、それでも堪えきれずに肩が小さく震えた。
必死に泣くのを堪えようとしてるのが分かる。それが余計に苦しくなる。
「それだけ傷ついたのに、逃げずにちゃんと向き合ってるから、今も苦しいんだろ?そんなときに誰かに頼って、甘えることの何がずるいんだ?」
凪の弱さも揺れる気持ちも俺は受け止めてやりたかった。それが凪に惹かれた理由だ。
「そういう凪だったから、俺は支えたいと思った。支えたいと思ったことを一度も後悔したこともねぇ」
少しだけ間を置く。それでも、これだけは譲れなかった。
「……今は、俺のことを考えてくれ」
低く、静かに言い切った。
それは自分の気持ちをなぞった先に在った本音。同時に、凪に向けた、確かな願いでもある。