第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
浴室からはシャワーの音が規則的に響いていた。リモコンを手に取りテレビをつけるとちょうど夜のニュースが流れている。ぼんやりと画面を眺めては、アナウンサーの落ち着いた声と淡々と進む話題を聞き流していた、その時だった。
「速報です」
画面の空気が一瞬で切り替わる。赤いテロップが大きく表示されて、思わず息が止まった。
〝大・爆・殺・神ダイナマイト!新人女優Aとの熱愛!!〟
「……え?」
無意識に声が漏れた。見間違いかと思って目を逸らせないまま画面を見つめる。
そこには見慣れた鋭い目つきの勝己と隣に並ぶ知らない女性の姿があって、女性のSNSからだろうか。距離の近いツーショット写真が何枚か画面に映し出された。
「……そっか」
ぽつりと、言葉が落ちた。私たちは所詮、終わった関係。それは分かっていたし、いつかはこんな日がくることだって分かっていた。なのに、胸の奥がほんの少しだけざわつく。
苦しいとか悲しいとかそういう感情じゃない。ただ、どこかに置いてきたはずの時間が急に引き戻されるような感覚で、一緒に過ごしていた頃の記憶がほんの一瞬だけ掠める。
「……よかったね」
誰に向けたのかも分からないまま小さく呟いた。祝福のつもりなのにぎこちなくて、そして、少しだけ胸が痛む。リモコンを握る手にわずかに力がこもって、小さく震えていた。
「凪…?」
ふいに名前を呼ばれてはっと顔を上げた。振り返るとそこにはタオルで髪を拭きながら立っている焦凍の姿。さっきまでのざわつきが一気に現実に引き戻される。
「どうした?」
変わらないまっすぐな視線に、合わせることができない。
「……ううん、なんでもない」
少しだけ笑ってそう答えるけど、動揺を隠しきれない笑顔は自分でも不自然だと思った。テレビの画面に映る文字と、並ぶ二人の姿。ほんの一瞬だけ焦凍の視線が止まる。だけど、すぐにテレビから視線を外すと、何も言わずにリモコンへと手を伸ばした。