第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「乾かした方が良さそうだから、絆創膏はいらないかな」
「…ん」
「怪我したらちゃんと言ってね。私、個性は使えないけど、処置くらいはできるから」
「ありがとう」
「轟君も…、無茶だけはしないでね」
ヒーローが背負う覚悟も責任も、私にはきっと理解すらできない。でも、無事でいてほしいという想いは、祈りでもあり願いでもある。
「なぁ、凪」
低い声が、すぐ隣で触れた。思わず息を止めて顔を上げると、視線がぶつかる。さっきまでより、少しだけ真剣な目だった。鼓動が高鳴り、手先の緊張がじんわりと増していく。
「どうしたの?」
問いかける声も、いつもより小さく少し震えていた。
「そろそろ、轟君は卒業しねぇか?」
「……え?」
そのまま視線をそらせない。心臓が、胸の中で跳ねている。
「焦凍って呼んでくれねぇか?」
低く、確かな声だった。距離も視線もすべてが一瞬で意味を持った気がした。
「……焦凍」
恥ずかしさを感じることもなく唇が勝手に動いていた。慣れないのにその響きが心地よくて、次は噛み締めるように名前を呼ぶ。
「焦凍…」
その声に、ほんの少しだけ頬を赤くする轟君。目の端でちらりと私を見ながらも、すぐに視線を逸らして、照れ隠しのように小さく笑う。
「照れてる?」
「いや、照れるだろ、普通…」
「轟君から言ったんじゃない」
「思いの外、凪が可愛くて…。まだ、轟君でいい」
「待って。可愛いのは轟君だよ?」
「いや、凪だ…」
いい大人が頬を赤くさせて、何をやっているんだろう。つい笑ってしまうけど、それでもこの時間がたまらなく愛おしく感じる。