第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
家族連れが帰った後、オーナーはまだ戻っておらず、店内は私と轟君だけになった。静かな店内に、オルゴールのBGMだけが柔らかく響く。今朝、オーナーが焼いたクッキーを数枚選んでお皿に盛り、カウンター越しに轟君へ差し出す。
「……私の、おすすめ」
轟君は顔を上げ、驚いた表情のまま小皿を受け取った。
「いいのか?」
「……せっかく来てくれたから…」
我ながら素直じゃないな、と少し呆れてしまう。でも、来てくれたことはやっぱり嬉しかった。
「ありがとう…」
「どうぞごゆっくり」
短いやり取りだけでも、目を合わせられなくても、カウンター越しの二人の微妙な距離感を、少しだけ楽しんでいた。