第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「ねえねえ、おにいちゃん!」
その声の方に視線を移すと、さっきまで親子で来ていた席の男の子がとことこと轟君のところへ駆け寄っていた。その後ろから小さな妹らしき子もついてくる。
「おにいちゃん、ヒーローショートでしょ?テレビで見た!」
「ほんもの?」
無邪気な瞳で見上げる二人に、一瞬だけ驚いたように目を見開く轟君。だけどすぐにほんの少しだけ視線を落として、子どもたちの高さに合わせた。
「ああ。そうだ…」
短く答える声はどこか柔らかい。
「すごーい!初めて見た!」
「ここで何やってるの?」
「休憩だ。この店からいい匂いがしてたからな」
「何食べてるの?」
「ここのマフィンが美味いって聞いて」
「ショート、マフィンが好きなの?」
「ああ」
「僕はね、ここのクッキーが好き」
「私ね、リンゴジュース」
「そうか。それも美味そうだな。今度はそれも頼んでみる」
「うん!」
子供達のはしゃぐ声と轟君の柔らかな声に店内の空気が少しだけ明るくなる。すぐに子供たちの両親も駆け寄ってきて、少し慌てた様子で頭を下げていた。
「ショート、すみません。子供達が邪魔をして」
「いえ、大丈夫です。ここのクッキーも美味しいって教えてくれたので、今度食べてみます」
そのやり取りを、カウンターの向こうからそっと見ていた私は、思わず胸がじんわりと温かくなるのを感じていた。子どもたちに向ける轟君の声は柔らかく、無理に威厳を張っているわけでもなく、でもちゃんと大人としての落ち着きもある。
知っているようで知らなかったヒーローの姿。私には眩しくて、格好よくて、目が離せなかった。