第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「なんで来たの?」
「ダメだったか?」
「…ダメじゃないけど、どうしたの?」
「今日はこの辺のパトロールもあったから、たまたま寄ってみただけだ」
「それ、絶対嘘でしょ。だってこのお店だって知らないって言ってたのに」
「ちょうど事務所に来てた八百万に聞いたんだ。紅茶も美味いって言ってたぞ」
「そりゃオーナーが自分で選んでる紅茶だから…ってそうじゃなくて。何も今日じゃなくてもいいのに」
「今日来なかったら制服姿の凪が見れねぇだろ?」
一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった。嬉しくないわけじゃないけど、この轟君の悪気のない本音にはいつも調子を狂わされている。
「でも、恥ずかしいから…。あんまり見ないで」
轟君は全く気にしていない様子だったけど、私はそう返すだけで精一杯だった。
「ああ。分かった」
「それで、ご注文は?」
「この店のマフィンが美味いんだろ?」
「うん」
「じゃあ、それとコーヒー…、いや、今日は紅茶でいい」
「マフィンと紅茶なら、テイクアウトもできるよ?」
「いや、ここで食ってく」
「…かしこまりました。では少々お待ちください」
くるりと背を向けて、カウンターの中へ戻った。見ないでとは言ったけど、なぜか背中に視線を感じてしまう。だけど、とても振り返る勇気はなくてマフィンを皿に乗せる手元に意識を集中させた。
他のお客さんと同じように無難に接客を終わらせた後、、カウンターの奥に戻っても、意識は完全には仕事に戻りきらなかった。視界の端にどうしても轟君を意識をしてしまって、そっと視線を向けてしまう。
轟君は外の景色を見ながらマフィンを一口かじり、静かに紅茶に口をつける。それだけで十分、絵になってしまうのだからずるい。バレてしまわないように作業に集中するけど、胸の高鳴りだけは誤魔化せなかった。
その時、小さな子供の弾むような声がした。