第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
その時だった。カラン、と控えめに扉のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
反射的に顔を上げた瞬間、言葉が止まった。見慣れた姿に心臓が不自然に跳ねた。
「……え?」
店の入り口に立っていたのは、まだ任務中であろう轟君の姿だった。
ヒーロースーツのままで、少しだけ髪は乱れていて…。それでも、まっすぐこちらを見つめる視線は変わらない。そのまま私のいるカウンターへ向かってくる。轟君との距離が近づくにつれて心臓はうるさいくらいに高鳴っている。
「あら、ヒーローがご来店なんて珍しいわね」
隣のオーナーは、少し驚いたように目を丸くしながらも、すぐににこやかな笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ」
その言葉に、轟君は軽く会釈をして、そのまま、まっすぐ私の前で足を止めた。
「……ここでいい」
ぽつりとそう言ってカウンター席に腰を下ろす。
「じゃあ凪ちゃん、後、お願いね」
「え、…私ですか?」
「紅茶の茶葉が残り少ないから倉庫からとってくるわ」
「……分かりました」
オーナーが席を外した途端、店内の雑音がやけに遠く感じた。ランチのピークを過ぎていたから店内は親子連れと、カップルの数組だけ。まだ誰も気づいていないようで、その隙にグラスのお水をそっと差し出す。
「いらっしゃいませ…」
「ありがとう」
店員と客の短いやりとり。これだけなのに変に緊張してしまって、どことなく気まずい。轟君からの視線を逸らすこともできなくて、顔を上げると視線がぶつかる。
「……っ」
「いいな、その制服。…似合ってる」
こちらの気も知らないで、轟君は呑気な笑みを浮かべている。まだオーナーも戻ってきていないし、周りを警戒しながら小声で話しかける。