第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
今年初めての秋刀魚は、脂がしっかりと乗っていて身は柔らかい。〝おいしいね〟そう笑いながら食卓を囲み、他愛もない話をする。今夜も食事が終われば、また仕事に戻ってしまう。ほんの少し、寂しさはあったけど、夜食用のおにぎりも美味しそうに食べてくれるところを想像したら、少しだけ誇らしくもあった。
「そうだ、轟君に言っておくことがあったんだ」
「どうした?」
轟君は箸を置き、手を止めたまま、ふと私の方を見つめる。
「明日ね、1日出かけてくるね」
「1日…?どこかに出掛けるのか?」
「うん。ずいぶん元気になったし、体力も戻ったし、…バイトをしようかなと思ってて」
内心ドキドキしながら、控えめにそう伝えた。〝バイト〟という言葉に反応するように、轟君は一瞬驚いた表情を見せ、その後、心配そうに眉をひそめる。
「急だな…。なんか困ってんなら相談してくれていいんだぞ?」
「ううん。そうじゃないの。今日ね、学生の時にアルバイトしてたカフェのオーナーに偶然会ったの。それで、少し話し込んじゃって…。暇なら明日手伝ってもらえないかって」
「大丈夫なのか?」
「うん。1日と言っても10時から16時までだし、注文を受けて運ぶだけだから」
「場所は?」
「C駅の近くなんだけど、コトリカフェってカフェ…。知ってるかな?」
「いや、知らねぇ」
「ははっ…、だよね。コーヒーとマフィンが美味しいお店なんだ。近くに学校もあるから学生さんたちもよく利用してくれてるカフェでね、キッズスペースもあるから雰囲気がすごく好きなの。……ただ」
「ただ…?」
「制服がちょっと可愛すぎるから、年齢的に恥ずかしいなって…。オーナーからは学生の時と顔が変わらないから、気にしなくていいって言われたけど」
「どんな制服なんだ?」
「ワンピースにエプロン…」
「別に変じゃねぇだろ」
「いや、普段そういう格好しないから。少し恥ずかしいなって…」
少し顔を赤くして俯きながら言う私に、轟君はじっと視線を止めた。
「似合うと思うけどな」
「え…」
「俺も見てみてぇな」
その言葉に思わず驚いて顔を上げると、轟君の目は真っ直ぐに私を見つめていた。ストレートに届く熱量に思わず頬が熱くなる。