第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
今回の任務に携わる主要ヒーローたちが集まり、敵側の動向についての説明と作戦内容が告げられた。
敵の組織が地方に散らばっていたせいもあってか、集めた情報も相当な量で、会議が終わった頃には夕方になっていた。会議室のブラインドの隙間からは、オレンジ色の光が細く差し込み、机の上に広がる資料を赤く染めている。他のヒーローたちが帰路につく中、俺はその場に残り、膨大な資料に目を通していた。
「爆豪…、今、いいか?」
情報を入れながらも気配はずっと感じていた。久しぶりに聞く声を無視するように、俺は手元の資料に目を落としたまま、静かに答える。
「…俺ァ、話すことはねぇ」
「俺はある」
「じゃあ100年後に言え」
「……今じゃ、ダメなのか?」
「テメェは冗談の一つも通じねぇのかよ…」
相変わらずの天然な態度に、一瞬湧き上がった苛立ちすらどうでも良くなる。深いため息をついた後、視線を轟に向けた。
「……ンだよ」
「凪のことだ」
「……だろうな」
その言葉と同時に、胸の奥が小さくざわついた。思わず目を細め、視線を固定する。
「今、凪と一緒に暮らしてる」
「知っとる。出久から聞いた」
「……そうか。爆豪への連絡が途切れたままで、すまなかった」
それくらいのことでこいつが俺に頭を下げるわけはない。俺をまっすぐに見た轟は、俺に言いたいことはそれだけじゃない、そんな目をしていた。
「元気なのかよ」
「ああ、元気だ」
「あいつ、泣いてねぇか?」
「大丈夫だ。…もう、泣いてない」
さっき見た凪の横顔がその言葉に重なる。あのまま俺といたら、凪の笑顔は戻らなかったかもしれない。轟がいたから、笑顔が戻った。それは紛れのない事実。