第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
出久が言葉を濁す。視線が逸れる。
「誰の意見だ!?てめぇの花畑思考に賛同する奴っつーのはァ…ッ」
「それはさ、なんていうか、その……」
「………麗日か?」
「いや、ぁ、違…っ」
「クソナードが…ッ、この場に及んで惚気とはァ、いい根性してンじゃねぇか」
「だからぁ、そんなんじゃないんだって」
出久のムカつくくらいの正論は、自分でも触れないようにしていた本音ごと抉る。
「わーっとるわ」
凪は俺への気持ちを残したまま、あの日、全部受け入れた。
自分から手を離すこと。それは自己犠牲よりも残酷な選択だ。
「だったら余計…、凪のそばにいられねぇわ。俺ァ、結局、壊すだけだからな…」
壊した後の、静かな空白。あの日、見上げた空の色。澄んだ青に、隠し通せるものはなかった。
俺は軽く肩をすくめる。手の中で握った拳が、ほんの少し震えているのが分かった。
「かっちゃん……。それでも僕は…」
出久の声が震えていた。誰も頼んでないのに勝手に悩んで、自分のことみたいに傷付いて…。どこまで馬鹿なんだよ。
「悪かったな、出久。……けど、これは俺の問題だ」
「…そう、だよね。……ごめん、僕、余計なことばかりしてるよね」
「ほんっと、いい迷惑だわ。お前ら揃いも揃って馬鹿ばっかでよ」
「でも、切島君たちだってかっちゃんのこと、心配してる。……轟君だって」
「知っとるわ。あのアホ二人にも言ったが、今は余計なこと考えてる暇はねぇ。余計な暇があったら、任務に備えとけ」
「…うん、そうだよね。僕たちにはヒーローとしての任務がある」
「そういうこった。プロなら私情を挟むな」
「うん……でもさ、なんか不思議だね」
「何がだよ」
「かっちゃんとこんな話するようになるなんてね」
「クソナードに相談とか、俺も落ちぶれたもんだわ」
「そんなことない、かっちゃんは昔も今もずっとかっこいいよ」
「うるせー…」
行き場のない思いは変わらずに留まったままだ。それでも出久の言葉に、救われている自分も確かにいる。
「じゃあ、そろそろ事務所に行こうか?中で話したいこともあるし」
「先に行ってろ」
「え?どこ行くの?」
「便所…」
そう言い終えると、足は自然に動き出した。街路の雑踏も、青空も、出久の声も、全部遠くに感じる。胸に引っかかる痛みと込み上げる感情を飲み込みながら、ただ前に進んだ。
