第2章 XXXをおあずけされた爆豪勝己の話
物騒な表現でも言葉尻は柔らかい。Tシャツを脱ぎ捨てた勝己に覆われ、上から視線を落とされる。迷いなく距離が詰まって唇が重なる。薄く開いた唇から冷たい勝己の舌が口内を犯すように入ってくる。キスの合間に器用にバスローブを外されて素肌が露わになっていくのに合わせてキスも深くなっていく。
「…んんっ」
軽く手首を掴まれて体も密着する。でも体重を預けすぎないようしているのが触れ合う距離から伝わってくる。それだけで胸は甘くきゅんと疼く。長いキスの後、顔を上げて視線を重ねた。
「……凪…」
「…はい」
「一つ確認しときてぇことがあんだけど」
「…何?」
熱をもつ視線と真剣な表情に不安と期待が湧き上がる。勝己の唇が開き何かを言いかけた時、サイドテーブルに置かれたスマホがけたたましく鳴り響いた。静かな部屋に不釣り合いな電子音。この時間、このタイミング、緊急コールだ。
「あ″ぁぁぁぁ!?…誰だよっ、クソが。夜中だぞッ」
「多分呼び出しじゃない?」
「ンなこたぁ分かっとるわ!誰だよ何だよっ、……あ″ぁ?轟ぃぃぃ!?空気読めやぁぁぁ」
スマホ相手に空気も何も…、いつものことではあるけど、瞬間湯沸かし器みたいに怒りが噴き出して声は完全に戦闘体制だ。私の方から見えるスマホの着信画面も〝轟〟の文字が見える。
「何時だと思っとんだクソがっ」
職業故、夜中のコールも珍しくはない。日中の仮眠中にだってコールで起こされることだってある。でも勝己の振り切った不機嫌の理由は〝今からいいところ〟を轟君に思いっきり邪魔されたからだ。通話での短いやり取りの後、バツが悪そうに私を見る。
「今日はどこ?」
「知るか。今から来いっつって切りやがった。……悪い、行くわ」
「うん。行って」
轟君からのコールだし一分一秒を争うのかもしれない。少しだけ感じる寂しさも飲み込んで短く答える。
「勝己、あんまり怒らないでね」
背を向け素早くヒーロースーツに着替える勝己を見守りながら呟く。振り返った勝己は少し落ち着きを取り戻していた。
「凪もさっさと服着ろ。風邪引く」
「うん、ありがと。今日も気をつけてね」
「当たり前だ。…秒で終わらせる」
軽く触れるだけのキスは唇の感触が名残惜しい。恋人からヒーローに切り替わる、その一瞬は甘さの奥で小さな寂しさが残った。
