第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
事務所を出ると、午後の光が街を柔らかく照らしていた。時刻はもう15時前。午前中の任務と昼の出来事の余韻が、まだ体の奥に残っている。
エレベーターに乗り込み、上層階の自宅マンションへ向かう間、頭の中は凪でいっぱいだった。あいつの作る弁当の彩り、ふとした仕草、笑顔。麗日たち三人の声が、後押しするように響く。
マンションのエントランスを抜け、自分の部屋のドアの前に立つ。カードキーを取り出す手が少し震えているのを感じた。柄にもなく深呼吸して、心を落ち着ける。 インターフォンを鳴らすことも忘れて、ドアを開いた。
部屋の電気はついているものの静まり返っていて、いつもはすぐに駆け寄ってくる凪の気配がない。
「…凪?」
そう問いかけても返事はない。まだ明るい時間、買い物にでも出掛けてるのかと思いながら、和室の襖を開けた。襖をゆっくり開けると、その真ん中で凪は取り込んだシーツに包まるように横になっていた。
一瞬、倒れてるんじゃないかと慌てて駆け寄る。でも、窓から差し込む午後の光の中で、静かに寝息を立てている。肩の力がふっと抜け、腰を下ろしてその姿を静かに見つめる。
普段の穏やかな表情や、俺の名前を呼ぶ声がふと浮かぶ。無防備な寝顔が、こんなにも愛おしいとは思わなかった。
手を伸ばせば届く距離にいる。触れてはいけないような、でも触れたいような、そんな感覚。
指先をそっと髪に滑らせ、柔らかな頬に触れる。
〝それはね、恋だよ〟
ふと麗日の声がどこからか聞こえた気がした。
「……好きだ」
その言葉が、胸の奥に重く、温かく響く。
ただその寝顔を見つめ、午後の柔らかい光に照らされながら、迷いのない気持ちが確信へと変わった。