第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「悩んでんのか?」
「うん。…でも、最初はフルーツのタルトにする」
なんの変哲もない普通の取り皿でも、艶のあるタルトを乗せるだけで心が躍る。一口をフォークで掬って、口へ運ぶ。艶のフルーツの甘酸っぱさの後を追うようにクリームの甘さが口の中で広がった。なんて幸せな瞬間なんだろう。
「美味そうに食うな」
「美味しいの、すごく。…幸せ過ぎるよ」
「オーナーはいつでも買いに来てくれたらいいって言ってくれてる。気に入ったんなら頼んでおく」
「そんな、いいよいいよ。予約だって取れないし、ケーキ一個の値段も二千円以上するし…。一生に一回食べれたらそれだけで十分だよ」
「それは高いのか?」
「高いよ。庶民にはなかなか手が出せないよ」
「なら、また頼んでおく」
「なんで?」
「凪が嬉しそうに食ってるから…」
平然と当たり前みたいに言った。きっと本人にとってはただの気遣い。でも、私にとっては調子が狂ってしまう。
「それはさすがに…、甘やかしすぎだからね?」
もちろん嬉しい。でも、これ以上は踏み入れちゃいけない。そんな気がしてる。
「ねぇ、一緒に食べよ?せめて味見だけでもしない?」
「そうだな。凪が」
「じゃあフォークだすね」
「凪のでいい」
「え?」
「洗い物が増えるだろ?」
「…すごい。轟君がそこまで考えてるなんて」
「普通だろ?」
「それを普通って言えることも含めて、……成長したね」
「そうか?」
「うん。偉い。…じゃあ、はい、味見」
轟君は何の迷いもなく、私のフォークを口に運ぶ。