第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「確かに美味いな」
さっきまで私が使っていたのに、そんなことは全く気にしていないみたい。
「どうした?」
「…な、なんでもない」
ダメだ。ずっと調子が乱れてるせいか、轟君の仕草一つ一つを意識してしまう。別の話題を探そうにもこんな時に限って思いつかない。ふと目に止まった赤い苺と白い生クリームに、自然に口が開く。
「そういえばさ、轟君って焦凍、だよね」
「それが、どうした?」
「ううん、特に意味はないんだけどね。美味しそうな名前だなって思って」
「そうか?」
「うん。ショートケーキのショートって感じで」
「ああ、確かに色もそうだな…」
「私ね、ショートケーキって一番大好きなの」
轟君はショートケーキを見て、それから自分の髪に触れた。赤と白の綺麗な髪が指先に絡む。そのまま少し考えるような間があって、私を見る。
「それ……、俺のことを大好きって言われてるみてぇだな」
言葉を理解するより先に、心臓が跳ねて、頬が赤くなっていく。気付かれないように紅茶を飲んで誤魔化すけど、タルトの味を忘れてしまうくらいに胸の中は静かに動揺していた。
「どうした?」
「ううん。なんでもないよ。次はショートケーキ食べよ?」
「ああ…。美味いだろうな」
轟君の優しい視線を感じながら、ケーキを持つ手は少し震えていた。
ここに来た頃とはまるで違う。生活の温度、轟君との距離、私の心も変わっていっている。
忘れていた甘い感覚。
思い出したくはなかった切なさ。
その理由を、私は触れてもいいのかな?
next.