第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「……ケーキだよね?」
「よく分かったな」
「ここのお店のこと知ってる?」
「いや、知らねぇ」
「ここのお店、予約するのも一年待ちなんだよ?」
「そうなのか?水道管の破裂現場が、ちょうど店の前だっただけだ。店に被害も出なかったし、オーナーが俺のファンらしくて、持ってけって…。断りきれねぇし、もし凪が食うならと思ってもらってきた」
「私…?」
「何が好きかとか知らなかったから、いくつか入れてもらってる」
「そんな…、こんな貴重なものを…」
紙袋の重さからして中身が一つや二つだけじゃないって分かる。雑誌で見たときはケーキ一個で二千円くらいの価格だったはず。これだけで一体いくらするんだろうか。
「そんな貴重なものだったのか」
「貴重だよ…。私ね、甘いもの、大好きなんだ。ケーキなんて久しぶりだし、しかもこのラ・フロールのケーキだなんて……、嬉しくて泣いちゃいそう」
轟君は少し驚いたように私を見て、それからふっと視線をやわらげた。
「じゃあ全部凪が食べていいぞ」
「ダメだよ。これは轟君へのお礼なんだから」
「俺というよりは凪のためにもらってきた」
「ありがとう…」
ケーキももちろん嬉しいけど、それだけじゃない。まだひんやりと冷たさの残る紙袋を抱きしめる。
「お夕飯にしよ?あ、体冷えてるならお風呂先に入る?」
「先に飯がいい」
「分かった。じゃあ座って待ってて」
いつものように夕食を囲んで、1日の出来事を報告し合う。まだ知らないことの多い轟君の一面を知れる時間。緊急の呼び出しコールのない夜は穏やかに過ぎていく。