第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
それでも夜はやってくる。余計なことを考えないように、いつも通り夕食の準備を始めた。今夜も二人分、それから、少し多めのおかず。キッチンには、BGM代わりにスマホのプレイリストを流している。普段なら気にも留めないはずなのに、偶然流れてきた恋の歌に、ふと手が止まった。
恋が芽生える瞬間を綺麗に綴った歌詞が、やけに胸に引っかかる。昼間感じた小さな異変とその理由。甘くて、少し切ない感情がふわりと胸にまとわりつく。
「私…」
思わず溢れそうになった本音に、ハッと我に返る。お味噌汁は沸騰寸前で、慌てて火を止めた。
今は、そんなことを考えている場合じゃない…、そう思ったその時だった。玄関のインターフォンが鳴った。まだ18時半、いつもより早い時間。私は手を拭きながら、玄関へ向かった。
ドアを開けると、そこにはいつも通りの轟君が立っていた。ヒーロースーツではなく私服。今日は少しはゆっくりできたのかな、そんなことも思う。
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
優しい視線がふと重なる。束の間の沈黙。それだけで、空気がふわりと柔らかくなる。靴を脱いでリビングへ向かう轟君の後ろを、私はついていく。
「私服なんだね」
「水道管が破裂した現場でずぶ濡れになったから」
「そうなの?大変だったね…」
リビングに入ると轟君がふと立ち止まる。思い出したように、手に持っていた紙袋をこちらに差し出した。
「凪、これ…」
「何?」
しっかりとした厚みのある紙袋を受け取り、印字された文字を見て、一瞬、目を疑った。
「これ…、ラ・フロール?」
「確か、そんな名前だったな」
間違いない。La Fleurと書かれてある。