第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「ねぇ、緑谷君…」
「ん?」
「勝己は、元気にしてる…?」
凪が呼んだ俺の名前は、やわらかくて優しい声だった。
「変わらない。元気だよ」
「そう…。テレビもあまり見てないから分からなくて…。私がこんなことを言える立場じゃないけど、どうしてるかなって気になってたの」
「大丈夫。こっちに戻ってきても任務やパトロールで忙しくしてるよ」
「よかった。…でも、無理はしないで欲しいな」
「言っておこうか?」
「ううん、これは聞かなかったことにしといて?勝己の邪魔はしたくないから」
「そっか…、分かった。凪さんの気持ちを尊重するよ」
「ありがとう。緑谷君にも気を遣わせてごめんね」
「気にしないで?久しぶりに会えて僕も嬉しかったから。…じゃそろそろパトロールに戻るね。凪さんも気をつけて」
「うん、ありがとう。緑谷君も気をつけてね」
「じゃ、また…」
その会話が途切れるのを聞きながら、俺はその場に立ち尽くしていた。あの日の後悔も、何もできないままの今の自分にも、どうしようもなく心がざわつく。
「かっちゃん…」
「…ンだよ」
「声かけなくて本当によかったの?」
「あ″ァ?」
「わっ、…怒らないでよ」
「怒ってねぇ…。状況整理しとったんだ」
「凪さん、轟君の家にいるみたい。元気になったら戻るみたいだけど」
「………全部、聞こえとったわ」
「いいの?このままで」
「俺から振っといて、今更どの面下げて何を言えばいいんだよ」
「普通に会えばいいじゃない」
それができねぇから、俺と凪の関係は持たなかった。好きだけじゃ超えられなかったものがあった。後悔しても、もう戻らない。
「あいつが、元気なンが分かっただけでいい…。…行くぞ」
あいつが新しく自分で決めたのなら、それでいい。
もしこの先、凪が轟を選んでも、俺が全部飲み込めばいい。
路地裏から見上げた空は澄んでいるのに、やけに薄くて脆く見えた。