第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「るせぇわ…」
「その辺で隠れていいから」
「………俺に命令すんな」
「うん。……分かった。じゃ僕の判断で、僕が勝手に話しかけただけだから…」
迷わず出久は前にでた。俺はその場で立ち止まったまま、凪の姿を追う。
「凪さんっ」
「……緑谷、君?」
出久の声に反応するように振り返る。驚きながらも変わらない声だった。
「ごめんね、いきなり声かけて…」
「ううん、そんなことないよ。久しぶりだね。パトロール中?」
「そう。たまたま見かけたから声かけたんだ。…顔色はいいみたいだけど、どう?少し元気になった?」
「少しずつね…。あ、そうだ。退院の時は、お花、ありがとう。お礼を伝えるのが遅くなってごめんね」
「気にしなくていいよ。本当は直接会って…、渡すべきだったんだけどね…」
壁にもたれ掛かりながら二人の会話を聞く。
「私ね、霞草が好きだったから。だからすごく嬉しかった」
「よかった。…ねぇ、聞いてもいい?今はどうしてるの?」
「うん…」
表情は見えない。けど凪の声がわずかに陰る。
「轟君のところでお世話になってるの。退院した後にね、家に入ろうとしたんだけど、怖くなって…。それで落ち着くまではうちにいればいいって言ってくれて、今も甘えさせてもらってるんだ」
あれから何度か凪の家を訪ねていた。だけど夜になっても部屋の明かりは灯らず、あいつがどこにいるのか、予想はついていた。
「……そうかよ」
誰にも届かない呟きは静かに消える。どうしようもできない虚しさが拳に力を籠らせる。
「そうだったんだね、……轟君が色々サポートしてくれてるんだね」
「普通に考えたらおかしな話だよね」
「そんなことないよ。轟君は優しいから、ヒーローとしても助けたかったんだと思う」
「そうだね…。でも、そのおかげでこうやって買い物にも行けるようになったの。もう少し元気になったら、自分の家に戻るつもりではいるんだけどね」
凪は静かに続ける。