第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「いい歌だな」
「そう?この曲はね、落ち込んだ時によく聴いてたの」
「そんなに古い歌なのか?」
「5年くらい前の歌かなぁ。社会人になってからよく聴くようになったから」
「俺は初めて聴いた。…けど、歌詞がいいな」
「でしょ?明るい歌ではないけど、でも辛い時にそっと寄り添ってくれる歌だから。久しぶりに聴いたら、色々と思い出して泣きそうになっちゃったけど」
「別に泣いてもいいぞ?」
「ありがとう。否定もせず、受け入れてくれる、轟君みたいな歌だね」
「俺か…?」
「なんとなくそう思っただけ。でも、今はね、この歌の主人公にはなりきれないかな。悲しいことも辛いことも、それでもいいって不思議と思えるんだ」
〝なんでだろうね…〟その問いを自分に向ける。もうすぐ朝が始まるから?それとも隣に轟君がいてくれるからだろうか?
「凪がそう思えるなら、それでいい」
「……うん」
海が近づくにつれて、視界がゆっくりと開けていく。まだ薄暗く、海と街の境界線は曖昧だ。それでも、その向こうには確かに朝が待っている。
「海だね」
「もうすぐ着く」
「夜明けに間に合ったね」
ちらっと見た轟君の横顔。口元は優しく緩んでいた。それだけなのになぜかとても嬉しかった。まだ人気の少ない道路は海まで真っ直ぐに伸びている。