第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「轟君は眠れた?」
「…ああ」
「でもまだ3時だからもう少し眠ったら?」
「凪はどうすんだ?」
「うーん…。この感じだと眠れないと思うから、もう少し月を眺めてようかな」
そう言うと轟君はしばらく黙り込んだ。夜風が二人の間をすり抜ける。もしかして、私はまた余計なことを言ってしまったかな、そんな不安が過ぎる。
「眠れねぇなら、出かけるか?」
その提案に思わず拍子抜けした。思わず轟君の顔を見上げると、真っ直ぐな瞳が月明かりに照らされている。どうやら冗談ではないみたい。
「…真夜中だよ?」
「夜明け前だろ?行きたいところがある」
「どこ?」
「……海」
「海?え、でもここからじゃ車でも1時間くらいかかるよ?」
「夜明けの海、一度行ってみたかった。…ダメか?」
「私は大丈夫だけど、でも轟君はちゃんと寝てないでしょ?」
「夜間のパトロールはねぇし、いつもよりは長く俺も眠れた」
確かに勝己も夜間のパトロールをしてた時は、深夜を過ぎて帰ってくるか、真夜中から出ていくこともあった。私が思っているよりもずっと、過酷な毎日を送っているんだと思い知らされる。
「連れて行ってくれるの?」
「俺一人が行ってもな…。せっかくなら凪と行きてぇ」
夜風にかき消されそうな声で呟くように言う。轟君のその言葉がやけに嬉しく感じて、私は少し頬を緩めながら小さく答えた。
「……行く」
顔を見合わせて微笑むタイミングが重なる。〝夜明けを見よう〟とお互い部屋着のまま、静まり返ったマンションの廊下をそっと抜ける。足音が響かないように気をつけながらも高揚感で満たされていた。
駐車場まで歩き車に乗り込む。真夜中なのに、どこか心が軽くなるような不思議な感覚だった。