第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「おまたせ」
綺麗に片付けられてテーブルにお蕎麦と薬味が並ぶ。向かい合って座ると、轟君がいつもより近く感じて、ほんの少しだけ落ち着かない。
「かけ蕎麦か?」
「うん、そうだよ。でも今日は暑いから冷たいお蕎麦。蕎麦つゆじゃなくて、冷たいお出汁にしたの」
「冷たい出汁?」
「こういう食べ方はあんまりしないかな?お口に合うといいんだけど」
「…いただきます」
轟君は丁寧に手を合わせて箸を取り、静かに蕎麦を口に運んだ。ほんの少しだけ緊張しながら、その一瞬を見つめる。
「美味い…」
「ほんと?」
「特に出汁が」
「そう?時間がなかったから鰹節でしか出汁が取れなかったんだけどね。少し濃いめに作ってあるから、氷が溶けていくと丁度いいと思うよ」
「すげぇな。そこまで考えてんだな」
「いつもはお出汁とった後は冷やすんだけど、今日は時間がなかったから即席です」
「言ってくれたらすぐ冷やすのに」
「そっか。轟君は氷の個性だもんね」
「ああ。そのくらいの調節はできる」
「じゃあ今度はお願いしていい?」
「ああ。いつでも言ってくれ」
そう言ってまた一口、二口と箸を進める。
「……美味い」
「よかった。出汁は少し多めに作ってあるから言ってね」
「……なら遠慮なくもらう」
子供みたいに嬉しそうなまっすぐな視線に、私の方が照れてしまいそうになった。
あっという間に一杯目を平らげた轟君の器を受け取り、おかわりの蕎麦をよそいながら、カウンター越しに声をかける。
「あのね、轟君…」
「どうした?」
「私、いつまでここでお世話になるのか分からないけど、少し元気になったら、家に戻るか、バイトでもなんでもいいから働かなきゃなって思うの」
「まだ先のことはいいんじゃねぇか?今は体も心も休ませるのが優先だろ?」
「そうなんだけどね。お世話になるし、家賃とか光熱費は貯金から出せるけど、ずっとはね、難しいし」