第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「そういう負担をかける気は一切ねぇ」
「ダメだよ。お世話になってるんだし。それに冬美さんにだって少しずつでも返したいし」
「それも気にしなくていい」
「でも…、そこまでは私も甘えられないよ」
その言葉を聞いて、少し黙ったまま視線を落とす。何かを言おうとして言葉を選んでいるようだった。
「じゃあ…」
顔を上げて私を見る表情は真剣で、思わず身構える。
「飯、作ってくれねぇか?」
「……え?」
「ついで、家のこともしてくれたらすげぇ助かる」
「そりゃ…、そんなことでいいなら構わないけど。でも私の作るご飯が、轟君の口に合うかどうか分からないよ?」
「俺はこの出汁が好きだ。これだけでもいい。また、作ってくれねぇか?」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が温かくなった。美味しいって言ってくれたことも、また、食べたいと思ってくれることも、それが全部嬉しい。
「分かった。轟君がそれでいいなら喜んで。…でも毎日お蕎麦にはしないからね?」
「ああ。凪が作るもんならなんでも食いてぇ」
「…ありがとう。轟君」
「それはこっちの台詞だ」
リビングに二人の笑い声が重なった。轟君の優しさにはどこか引き目を感じていたけど、今は素直に受け止められている。頑なだった心の中が少しずつ溶かされて緩んで解れていく。
差し出してくれた手にそっと触れるように、轟君との生活が始まった。
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